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▲⭐️R0013967

夏になるとソフトクリームが食べたくなる。
甘くて冷んやりしたその口当たりと、先端に向かって輪が閉じていく造形。
そして口金から成形される角のあるクリーム。
バベルの塔が魅力的なのは同様の造形だからだろうか。

そもそも旧約聖書に登場する「バベルの塔」は、1563年のブリューゲル作品から私達の記憶に刷り込まれている。
山間の谷の向こう側にそびえるバベルの塔は、高さはそれほどでもないが塔としては妙にリアルに描かれていて、周りに配置された人々の様子に興味を抱かせる。
天に届く塔という空想が紀元前から今に伝えられている一枚だ。

細密画を得意としたブリューゲルだが、なかでも「雪中の狩人」は秀逸だ。
美術の教科書に載っていたその絵をウィーン美術史美術館でしばらく食い入るように見た記憶がある。

コンビニエンスショップで買ったバベルの塔は、5分もしないうちに何処かへ消えてしまった。



▲⭐️img114

1903年、パリ右岸、北西に位置する高級住宅街に世界初の個人美術館が開館した。
ギュスタブ・モロー美術館である。

作家が生きていた時には、自宅兼アトリエ、そして絵画教室としてジョルジュ・ルオー、アンリ・マティスなど名だたる作家がこの場所から育っていった。
作家の死後、遺贈された建物と内部の一切を美術館として開館することになる。

建物の3階から続く独特なデザインの螺旋階段を上がると、そこには作家の作品のほか窓際に多数のデッサンがファイルされている。
私達が館内で目にするのは所狭しと飾られた油彩の作品だが、これらデッサンの一群にも注目したい。油彩の下絵となったものからスケッチとして完成しているものまで、絵画の過程と作家の軌跡が見てとれる。

新しい歴史画と象徴主義の道を切りひらいたモローだが、その一方では美術学校の教鞭をとり、生徒達により多くのデッサンを描くよう奨励したという。絵画の理想を語る在りし日のモロー教授に出会いたかった気がする。

美術館を出たあと、ふとモローの書斎にあった本棚の蔵書や小さな彫像を思い返した。
モローの本質を解く鍵は、そんな場所にしまわれているのかもしれない。




▲⭐️img156

ブールデル美術館はパリのモンパルナス駅にほど近い一画にある。


彫刻家アントワーヌ・ブールデル。
ロダンと同時代に生きたフランスの彫刻家だ。

その名前を知らない人もいるかもしれないが男が力強く片ひざをつき
弓をひいている「弓を引くヘラクレス」の作者といえば思いうかべる
人も多いだろう。

美術館は作家の住まいとアトリエだった場所に建てられている。
アトリエは奥まった位置の庭に面した場所にあり、ブールデル自身が
制作していた当時のまま残されている。
一見、時代をさかのぼって迷い込んだ雰囲気に包まれる。

雑然としたアトリエには、作家特有の力強い作品とは異なる愁い顔の
女性像も置かれていた。
その少し暗がりの中に安置された作品に何故か心を動かされるのは、
アトリエに満たされた空気感と作品の放つリアリティに起因して
いるからだろうか。


もしモンパルナスへ行った折には、ぜひこの1900年代初期の空間を
訪れてもらいたい。


そこには偉大な彫刻家の強さと優しさが刻まれている。



▲⭐️img035

ルーブル美術館には2点のフェルメール作品がある。
しかも日本での行列が嘘のように間近でゆったりと鑑賞できる。


「天文学者」と「レースを編む女」。
モナリザ人気の影にひっそりと隠れているかのようにリシュリュー翼の
オランダ絵画群に交じっている。

「レースを編む女」は20センチ前後の小さな作品。

フェルメール作品ではお馴染みの窓を取り入れた内観構図ではなく、
レース糸とそれを編む女性の一場面を切り取った構図だ。

手前に下がる繊細な赤と白の糸が画面全体にアクセントを添えている。
スクエアな年代を感じさせる額縁も絵と一体化していて美しい。


この小さな宝石のような作品に出会うためにまたルーブルへ行きたくなる。




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