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ベルンハルト・シュリンク作「朗読者」。
第二次大戦後のベルリンを舞台にした物語である。
2008年に「愛を読むひと」という邦題で映画化された。

本を読んできかせる、それはおとなが子どもに対して行うことだと思うひとが多いかもしれない。
この物語では青年が大人の女性のために本を読むという行為がテーマとなり、やがてはそれぞれの人生に関わることになる。

自分にとってプラスになること、マイナスになること、それらを私達は無意識のうちに選別し生きている。善悪の区別もできる。
しかし戦時下において誰もがそうした普通の意識で冷静に自分を見つめていられたのだろうか。

主人公の女性に備わったものは数少なく、世界は歪んだ状況下のなかにあった。
そして欠如していたものの代償はあまりにも残酷で背負うには重過ぎた。

クラクフ収容所で主人公ハンナが遭遇した悲惨な出来事は裁判を通して克明に語られる。
裁判官の問い詰めにたいしてハンナがひと言問いを投げかける。
「あなたならどうしましたか」
口ごもる裁判官の戸惑いに理屈では解決できない当時の様子がうかがえる。
それは同時に私達にも同じ質問が問いかけられている気がした。

「本」という崇高な存在がハンナの運命に寄りかかる。
映画では投獄され年老いた主人公の半生をケイト・ウインスレッドが見事に演じていた。

このストーリーが秀逸なのは戦争がもたらした悲劇だけではなく、どのようなかたちであれ愛情に包まれ、慕う尊さをえがいていることにある。

自転車で田舎道を走る恋人たちの光景。
女性らしいワンピースを着たハンナ。
陽の光をあびて映しだされる、かけがえのないひと夏の想い出が何よりも美しい。





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