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ひとしきり降った雨も
午後には何処かへ消えていった

数冊の本をむき出しで抱えたまま
大学生らしき若い女性が前を通りすぎる

今ではトートやリュックに詰めこむのが
普通だったからか
その女性の姿が珍しく感じられた


しばらくして近くのカフェに入ると
偶然 先ほどの女性が外に面した席で
本を読んでいた

少し離れた席で私はコーヒーを注文した

5分ほど経ったころだろうか
私の目に意外な彼女の表情が映る


泣いていた
彼女は本を読みながら確かに
泣いている様子だった

何故かその光景が
脳裏に焼きついて離れなかった

本を読み涙する横顔

確かにそれは
特段に珍しい姿ではないかもしれない

ただ今の時代 パソコンや携帯電話を見つめて
涙している姿を見ることはほぼない

やはりそれは本を読むということからくる
感受性なのだろうか


そういえば自分も本を読んで泣いたことがあった
もう数十年前のことだ

感受性の高い若かりし日
一冊の本から受ける感動は計り知れない


本であれ音楽であれ
誰もが得られる感動との出会い

最も大切にしたいものが
色あせていく気がしてならない




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Re: 60年前

ダッファーさま

60年前の貴重な経験をお聞かせいただき
ありがとうございます。昭和34年といえば
当時の皇太子ご成婚という新しい風が吹く一方で、
まだ古い考え方に覆われた時代だったのかも
知れませんね。男子が人前で泣くことなど
今以上に許されないことだったはずです。
布団の中での涙は、青年期の忘れられない思い出ですね。
コメントをいただきありがとうございました。







こんにちは。

60年前、中学の正月休みで寒い北国の実家に帰っていました。
室温は零下、熱湯を注いだ湯たんぽを抱えて布団に入り、島崎藤村の『夜明け前』を読んできました。体が熱くなり、異常な熱気を感じ、激しく慟哭しました。泣いている姿を親に見られまいと布団の中に潜っていました。
後にも先にも本を読んで慟哭したのはこのときばかりです。

2019/07/30(Tue) |URL|sulpice [edit]
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