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その音をはじめて聴いたときは
楽器というより、ひとの歌声を聴いている気がした。

イツァーク・パールマンの奏でる音色には
いつも楽器の音を超えた感情表現が身体に伝わる。

もちろんそれは彼のストラディヴァリウスをもって
叶えられているというのも事実である。


映画シンドラーのリストでは映像とのかけ合いが見事だった。
パールマン自身はイスラエル出身で、
両親はポーランドから移住したユダヤ系理髪師だ。
ことさらこの映画には思い入れがあったのだろう。
哀愁をおびた演奏が心に響く。



寒い朝、パールマンを聴きながら
カメラを片手に遠くを見つめる。

景色の向こう側には、
忘れかけていた若き日の自分が蘇る。

それはもどることのできない邂逅だ。


同じ場所、同じアングルでカメラを向ける。
何かが違っている。
おそらく被写体は変化していないのかもしれないが、
時間軸が違っている。
撮る側の意識が違っているということなのだろうか。
いやカメラそのものもフィルムからデジタルへ変わっている。

フィルム撮影にはレコード盤にも似た粒子の輝きを感じていた。
時に荒々しく、地引網のように予想外の結果もあるが、
そこには獲物を捕らえる手応えがあった。


時代おくれの邂逅とパールマン。


目の前をワイヤレスイヤホンを付けた若い女性が通り過ぎる。
時計はまもなく、午前10時になろうとしていた。





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