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R0015294wのコピー🌟

そこへ映るのはただの風景にすぎない。
だが自分の求めるもうひとつの世界がそこにある。


ハーフミラーのように景色が重ねられた窓。

普段なら歩くひとや車の流れが映し出される。
海辺の街なら水平線が映るだろう。


窓の向こう側から光がささやく。
何十分の一という瞬きで自分も応える。


手を差しのべても届かない距離と時間。


ふと気づくと、窓をじっと見つめる自分に
店の中から店主が笑顔で反応している。

向こう側にある、もうひとつの現実世界。

こういう時は苦笑し、その場を取り繕うしかない。





img345P(オリジナル2)🌟

パリ セーヌ川。

ここでは数々のドラマや映画が撮影された。
そして脇役として活躍した役者たちが今もひっそりと暮らしている。


鳩。フランス名はpigeon.

ときおり彼等は役者の仕事をこなし、普段は自由に過ごすのが日課だ。



芝居では監督の指示などいっさい受けず、移動したいときに自由に翔び立つ。
その気ままな演技が作品に効果をもたらし、多くの名監督に使われてきた。

私自身もここで数羽に演技してほしいと依頼したことがあったが、
その場でなかなか承諾してもらえず惨敗した記憶がある。


そんな彼等も観光客には弱いらしく、わずかなポップコーンでうれしそうに集まり、おどけた表情で踊ってみせる。まったくの気分屋だ。




陽が傾くと、舞台袖の樹木に身を寄せて静かに休んでいる鳩たち。
次回撮影では素直に出演してくれるだろうか。


シルエットの彼等から微かな笑い声が聴こえる。





P6030896🌟

望むでもなく夏がくる。

そういえば空から「もうすぐです」と
雲が云っていたのを思い出す。



通り過ぎるひとの波をくぐりながら、
原宿の街を彷徨い歩く。

自分は何処へ向かっているのだろう。
インパラの群れのなかを年老いたチーターが歩いている気分か。



喧騒を避けて大通りから路地の住宅街へ。

モダンなコンクリートの建物前に薔薇が咲いていた。
・・・今日という一日が、優しい香りにつつまれる。



しばらく歩き、カフェでひと息つく。


アイスティーに浮かぶ大きめの氷が、
ゆっくりと来る夏に溶けていく。






R0016095🌟


普段は食事についてこれといってこだわりはない。

嫌いな食材も特にない。
まあそれはそれで良いことだが
「何か食べたいものある?」と聞かれると、
「なんでもいいよ。」と相手に面白くない受け応えをしてしまう。
食事を楽しもうという時に、これはない。
いつも失言を繰り返してばかりいる。


ひとりの時間。
朝食をとった後しばらく何も口にせず夕刻をむかえる。
風の心地よい季節、シャツ一枚で身軽に外出する。

こんな時には食べたいものがひとつだけ浮かぶ。
ステーキだ。香ばしく焼けたミディアムレアのステーキだ。

まずはグラスワインで口を軽く潤し、よく切れるナイフで肉を少し大きめにカットする。
切り口はブラウンからワインレッド、そしてコーラルピンクへと変化している。
フォークに肉の重みを感じながら、ゆっくりと口に運ぶ。

その瞬間は何の言葉を発するでもなく、じんわりとただ時間をおくる。
本当に美味しいものに出会ったときは、言葉などいらない。
ただ噛みしめるだけだ・・・。

200gの食材が運ぶ幸せ行きのチケット。



休日の夕暮れ。
そんなことを考えながら、ふと財布を見直す。
カレーうどんでも十分幸せになれそうだ。





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