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○img053P_Fotor🌟


「おまえは何処に行きたいんだ。」

「おれはこのあと美味いものが食えるなら、何処でもいい。」

「そうか、でもこの地図じゃあわからないな、レストランは載ってない。
 まあいいさ、ともかく街外れがいい。安くて美味い店があるはずだ。」


 もちろん二人の会話が聴こえたわけではない。
 昼時前、私も腹がへり、そんなことを考えていた。





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ドーヴィルへはここから列車にのる。
私自身は行ったことがない。

そういえばクロード・モネはこの駅のホームから絵を描いている。
その頃はまだ蒸気機関車が走っていた。



街行く人々は何かに追われるように足早に去って行く。
仕事の途中なのか、これから目的地まで移動するためだろうか。
空気の冷たさが身をこわばらせるのか、うつ向き加減に前を通り過ぎる。

今日が何日なのか、すぐに浮かんではこなかった。
仕事のこと、それさえも頭をよぎらなかった。

こうしてこの場所に立っていること。
それだけだった。

頭と身体のハードディスクに、この場所の空気が刻みこまれる。
何年か後には、その記憶も引き出せなくなるのかも知れない。

駅から発つ列車のように、この場所から離れる必要があるのは確かだ。


空には、幾筋かの飛行機雲が見えていた。
その日は帰国する何日か前だった気がする。


時間と場所を時折再生する。

午後2時10分 サン・ラザール駅。





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