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パリ サンジェルマン・デ・プレにある「カフェ ドゥ・マーゴ」。
店内には店名の由来にもなっている二つの中国人形が飾られている。

サルトルやボーヴォワールなど文化人にも愛された歴史あるカフェは、
場所の良さもあり観光客があとをたたない。


朝まだ早い開店直後、男が出入口近くの石の床をおもむろに開けている。
床面の一部が地下倉庫の扉になっていて、そこから食材などを地下へ搬入していた。これも普通のことなのだろう、ギャルソンが男と楽しそうに話している。


時間が経つとともに新聞紙を手にした背広姿の客や、老夫婦などが席につく。
まだ観光客が席を埋めるには早い時間だ。


思いたくはないが、近未来にはロボットがカフェでサービスする日がくるかもしれない。その時、中国人形はどうなっているのか。ぼんやりとそんなことを考えた。


カフェでは、今日も変わらない日常のひとこまが繰り返される。




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ハンガリーの片田舎、エゲルという小さな街へ数日間滞在した。
1993年。まだ自分も若かった頃だ。

ブダペストの知人に数人の地元に住む友人を紹介され、そのなかにティミという女性がいた。
彼女は20代の学生だったと思う。

言葉の通じない自分に、片言の英語で熱心に街のいろんな場所を案内してくれた。
街にある名所やミナレット、周辺の葡萄畑や湖。夜は友人達とクラブへ行き、ダンスのうまかった彼女は私の手をとり一緒に踊ってもくれた。
フロアにはACE OF BASE のTHE SIGNが響いていた。
言葉の不便さはあったけれど、お互いに何とか気持ちを伝えようと懸命だった気がする。


数日が過ぎた旅立ちの日。
ティミは自身の住むアパートメントに私を案内してくれた。
部屋へ入ると彼女は引き出しから1枚の写真を取り出した。
それは制服を着た彼女がひとり写っているモノクローム写真だった。
その写真を裏がえし、自分宛のメッセージを記してくれた。


思ってもみなかった行動だった。
自分は少し照れながらその様子にカメラを向けた。
今思い返すと、その時本当は照れるどころか感動して熱くなっていた気がする。
ファインダーが揺れていた。


あれから長い年月が過ぎた。


ティミは今どうしているだろうか。
いつか日本へ行ってみたい、そう言っていた。


瞼の奥にティミの笑顔が映る。



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