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 【No.37】陸橋  2014/08/13 (Wed)
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パリでは鉄道以外で道が立体交差している場所を見る機会が少ない。

その陸橋はパリのサン・ラザール駅からほど近い場所にある。ロシェ通りとマドリッド通りが交差し、ポルテイユ通りもそこから続いている。

どうしてそんな場所を知り得たかというと、「パリ・ジュテーム」という映画にその陸橋が登場したからだ。
映画では怖い吸血鬼に追いかけられて、その陸橋への階段を駆け上がるという夜の設定だったが、昼間に見るとクラシカルで重厚なディテールはそれとなくパリの街に溶け込んでいる。

休日の午後、この橋の周辺は人影もまばらで車も数える程しか通らない。
タイムスリップしたかのようなこの場所が何とも魅了するのは、陸橋から続く別の道筋が、あたかもこれから待っている別の生き方を象徴しているように見えるからだろうか。

ともあれ、立ちはだかる陸橋に不思議と惹かれてしまった。
パリ 休日の午後、陸橋から今一度これからの進路を見つめ直すのも悪くない。




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夏の移ろい。蝉の鳴く声に氷の溶ける音。
時間とは無関係に止まり、また行き過ぎる。

2002年のスペイン映画『トーク・トゥ・ハー』。

物語の中で収監された男がキューバの話をするセリフがある。
「窓から身を乗りだし、時が過ぎるのを見つめるだけ。」
「何も訪れない。」
「あの女は僕そのものだ。」
無力感と余韻がまわりを包みこむ。男は自らの運命を悟ったように友人にこう呟く。

自分もハンガリーの田舎町で同じような情景に出会ったことがある。
その年配の女性は私がそこを通りかかる前から窓際で外を見つめていた。
一枚だけ写真を撮らせてもらった。
もの珍らしい東洋人がカメラを片手に通りかかるのを少し気にかけたようだが、わずかに微笑みかけたあとまた静かに遠くを見つめていた。

『トーク・トゥ・ハー』に登場するふたりの女性。
そこには生と死という舞台と共に「止まった時間」が重要な鍵として描かれている。

夏の窓は時間の扉なのかもしれない。



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夏になるとソフトクリームが食べたくなる。
甘くて冷んやりしたその口当たりと、先端に向かって輪が閉じていく造形。
そして口金から成形される角のあるクリーム。
バベルの塔が魅力的なのは同様の造形だからだろうか。

そもそも旧約聖書に登場する「バベルの塔」は、1563年のブリューゲル作品から私達の記憶に刷り込まれている。
山間の谷の向こう側にそびえるバベルの塔は、高さはそれほどでもないが塔としては妙にリアルに描かれていて、周りに配置された人々の様子に興味を抱かせる。
天に届く塔という空想が紀元前から今に伝えられている一枚だ。

細密画を得意としたブリューゲルだが、なかでも「雪中の狩人」は秀逸だ。
美術の教科書に載っていたその絵をウィーン美術史美術館でしばらく食い入るように見た記憶がある。

コンビニエンスショップで買ったバベルの塔は、5分もしないうちに何処かへ消えてしまった。



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