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1903年、パリ右岸、北西に位置する高級住宅街に世界初の個人美術館が開館した。
ギュスタブ・モロー美術館である。

作家が生きていた時には、自宅兼アトリエ、そして絵画教室としてジョルジュ・ルオー、アンリ・マティスなど名だたる作家がこの場所から育っていった。
作家の死後、遺贈された建物と内部の一切を美術館として開館することになる。

建物の3階から続く独特なデザインの螺旋階段を上がると、そこには作家の作品のほか窓際に多数のデッサンがファイルされている。
私達が館内で目にするのは所狭しと飾られた油彩の作品だが、これらデッサンの一群にも注目したい。油彩の下絵となったものからスケッチとして完成しているものまで、絵画の過程と作家の軌跡が見てとれる。

新しい歴史画と象徴主義の道を切りひらいたモローだが、その一方では美術学校の教鞭をとり、生徒達により多くのデッサンを描くよう奨励したという。絵画の理想を語る在りし日のモロー教授に出会いたかった気がする。

美術館を出たあと、ふとモローの書斎にあった本棚の蔵書や小さな彫像を思い返した。
モローの本質を解く鍵は、そんな場所にしまわれているのかもしれない。




 【No.28】煙の行方  2014/06/22 (Sun)
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煙草の煙がライトに照らされる。

一方向に向けられたライトは、光跡の浮かび上がる範囲だけ煙を映し出す。鮮明に照らされた煙は暗闇で途切れる。
ただそこにも煙は存在し、静かにゆっくりと上昇している。
当たり前の話だが、カメラは光によって浮かび上がった見えるものだけを写し出す。

見えるものと見えないもの。見えないけれど存在しているもの。
そして見えないけれど感じられる精神的なもの。

見えなくとも、存在している確かなものを写真に撮りたいといつも願っている。



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京都、イノダコーヒー。定番といわれる店には、それなりに落ち着ける理由がある。

石積みの外壁に奥まった庭のテーブル席。
清潔感のある赤いチェックのクロスが、優しく時間を包み込む。
白地のカップに描かれたロゴからは親しみとセンスの良さを感じる。

そしてそこにはパソコンや携帯電話のない、在りし日のコーヒー店の姿が残されている。



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学生時代、立体表現の授業で粘土を使ってトウモロコシを作る機会があった。

まず芯の部分を作り、そのあと一粒一粒、実の部分を付けていく。根気のいる作業だが、物の成り立ちを中身から考えて創るための良い課題だった。

彫刻作品で感動するのは、作品から湧き立つ感情表現、そしてリアリティな中身の表現かもしれない。

バチカン サンピエトロ大聖堂にあるミケランジェロの「ピエタ」。
あまりにも有名な作品だが、その大理石とは思えない艶やかな肉体を支える腕には、石像を超越した「重さの表現」が感じられる。

しかもキリストという存在が、より重みを増して表現されていると感じるのは私だけではない気がする。




 【No.27】エゲル  2014/06/21 (Sat)
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ハンガリー北東部にエゲルという美しい街がある。

ブダペストに住む知人の案内でこの街に数日滞在した。
ワインが有名で近郊には沢山のワイン畑が広がっている。

夜、街の中心部から歩いて1時間程の山あいにある「美女の谷」という場所へ出かけた。
1時間も歩けたのは、若かったのかもしれない。
山の斜面に設けられたいくつもの洞穴。そこはワインを貯蔵すると同時に簡易な酒場になっていて、店ごとに違うワインを出している。

ハンガリーワインといえば甘口の貴腐ワインが有名だが、エゲルではもちろん他にもいろんなワインがあり、好みによりテイストを楽しめる。

私達一行がたどり着いたのは、年配で気さくな風情の主人がいる酒倉だった。
自分でも相当飲んでいるのか赤い顔で自慢のワインをすすめてくれた。
気分をよくした私はお土産に一本の赤ワインを買った。
帰り途は酔っていたのと、バカな話で盛り上がり早かった気がする。

テレビでよく見るフランスのワインシャトーとは全く違うのだが、ハンガリーの片田舎で飲んだ地元ワインは、酒をつくる人と飲む人が一体になれる何とも味わい深い経験だった。

月がきれいな夜、またエゲルでワインを飲みたい。



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