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 【No.183】恋  2018/11/08 (Thu)
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あなたがいたら
もうなにもいらない
そんな恋が
誰でも一度はある

胸をしめつける想いは
やがて燃えつき消えていく

実る恋
実らなかった恋

新たな種子が落ちると
空はいつの日か
優しく雨で地面に合図する

いくつかの恋が
今日も何処かで芽生えている




 【No.175】TOOTH PASTE  2018/08/31 (Fri)
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いつの頃からだろうか
海外で地元のスーパーに売っている
「練り歯磨き」を土産に買うようになった

土産といっても自宅用としてだが
これが結構楽しめる
わずかな期間
旅の延長気分に浸れるからだ

中身はそれほど変わらないが
パッケージにそれぞれ個性があり
国柄や表現の違いが見てとれる


ちなみに写真はイタリア製の練り歯磨き
知人からもらったものだが
その美しい外装デザインは
化粧品のような輝きを放っている

まだ未使用だが
中身はどんなテイストなのか
少しばかり期待がふくらむ


残念なのは消耗品の運命として
この練り歯磨きもすぐに無くなってしまうことだ

やがて無くなるものが放つAURA



また新たな逸品を求めて 旅に出ようか





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雨がやんだ日
その手に一通の手紙を握りしめ
娘はサンダルで駆けていった

父はそんな娘の姿を
近くで見ているしか出来なかった



それは昭和という時代の出来事

どの家にもそれぞれが抱えた
ドラマがあった



続く平成という時代も
もうすぐ終わりを告げようとしている


電車で向かい側に座っている全てのひとが
携帯電話を手にして静かに座っている
新聞紙を畳んで読みふける会社員はいない


これは幼い自分たちが夢見た光景なのだろうか

手紙がメールとなり
筆跡のない画面を見つめながら
私たちは何処へ向かおうとしているのか


未来を生きる
きみのその手には






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夏という鞄から

乾いた地面に落ちた蝉


きのうまで鳴いていたのか

きょうも鳴くはずだったのか


誰にも気づかれず

天を仰ぐきみに

Lullaby





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いつの頃からだろうか
街のレストランやカフェで
オリーブをよく見かけるようになった

オリーブオイルが使われるイタリア料理店など
店先での雰囲気づくりに一役かっている



オリーブの写真は
そのまま撮ると葉の色が均一なため
どうしても画面が単調になる

白い背景に映し出される影は
淡いグレーが水面を描き出す


うつろな夏に
オリーブの影を追うひととき





 【No.139】akogare  2018/02/03 (Sat)
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欲しいものがあるとき。


何度も繰り返しその姿や形を見ては、
手に入れたときの情景を頭に浮かべる。

それは自分にとって本当に必要なものか。
明日も明後日も、一年後も必要なものか。
冷静に考える。

こうして悩んだり嘆息をもらすとき、
まだ先には希望がある。


そして恋愛にも似た
ひとときの憧れというその過程にこそ、
曖昧な幸せがある気がする。




 【No.134】師走の月  2017/12/25 (Mon)
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三田の駅から数分歩き、細い路地に入った。

古風な赤い暖簾をくぐり、カウンターのみ8席ほどの店へ入る。

まん中の空いている席に目線をおくると、
中にいた女主人が話しかけてきた。

「もう定食は出来ないけど」

「かまいません、いいですか?」

「8時30分までだけど」

時計はもうすぐ8時になろうとしていた。

「大丈夫です」

そう言って背広姿の自分たち二人は
ほかの客の間に座った。


メニューはいたって少なかったが、
焼餃子と水餃子、それぞれ一皿ずつ注文した。

オーダーして私たちの前に餃子が出てきたのは
15分ほどしてからだったろうか。
女主人ひとりでの切りもりなので苦にはならなかった。


一皿には6個、二種類の餃子を連れと話しを交えながら交互につまんだ。

皮の部分は厚みがある。
見た目は特に珍しい餃子ではなかった。
あえて言うなら普通のスリムな三日月型とは違い、
こんもりとした半円形をしているのが特徴的だ。

しかしひととき口に入れると、
そのふんわりとまろやかな食感に気付かされる。
ニンニクとニラ、そして豚肉との絶妙なバランス。
肉汁が口の中で弧を描く。

一本の瓶ビールと共に、ふた皿の餃子が15分ほどで腹に消えた。


時計の針はすでに8時30分を回っていた。


「すみません、会計を」
食事をしながら実は営業時間が8時までだったということを知り、
女主人に申し訳ない気がした。


「美味しかったです」
「次回はもう少し早い時間に来ます」

それを聞いた女主人は初めて笑顔を見せながら釣り銭を手渡してくれた。



店を出てから振り返ると、
古くて温かな昭和の佇まいがそこにあった。

そういえばこの店には名前がない。
暖簾に「餃子」という文字が書かれているだけだ。


店名が必要ない訳は、この店を訪れるとわかる。

あえて名前を名乗らず、
必要以上に媚びることなく、
出来ることを丁寧に行い、
目立つことを望まない。

そんな誰しも出来るようで、
できない仕事、生き方がここにある。



帰り道、月が店を照らすかのように
ほんのりと輝いていた。

師走の月が餃子の形に見えた。





 【No.132】木立ち  2017/12/13 (Wed)
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季節が巡ることは、日々の生活をおくる私たちに
何かを伝えようとしている。

同じ繰り返しのように感じていても、
少しずつ何かは変化している。

立ち枯れた樹木、成長した枝と新たな芽吹き。
取りまく気温も昨年とは随分と違っている。

それは私たちにも当てはまる。
しばらく会っていない人が亡くなる、
近くにいた仲間が転勤する、子どもが生まれる。

テレビの見方、雑誌の買い方、会話の仕方。
世の中が変化することに、否応なく私たちも合わせて
暮らしている。



年の瀬が近づく。

来る年も何かが変わるだろう。

ただ、こころの中では
変わらないものを
抱き続けようと感じている。




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街角でつい後ろを振り返ってみることがある。

それは香りの旋律を感じた時だ。



ブランドのバッグや靴などは積極的に取り入れる日本人女性も
香水やオー・ド・トワレとなると急に消極的になる。

人種として体臭が弱い日本人は、そもそも匂いというものに敏感な気がする。

どちらかというと香りそのものを嫌っているひとも多い。
ある時は蔑むように「臭い」という一語で評価しがちだ。

では本来の日本人はというと、平安時代の昔から貴族を中心に
お香をくゆらせ、部屋や衣服へ「移香」することを楽しんでいた。

そうした歴史があるものの、香りの文化は日本に根づかないままのようだ。



決して強い香りでなくていい。
日本人に合った、ほのかな香りとでもいうのか、
そのひとに合ったイメージの香りを纏うのも
おしゃれの一つではないだろうか。


それこそが自分だけの旋律を奏でることだから。





 【No.128】記憶  2017/11/20 (Mon)
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忘れられないことがある

また誰しもいつの間にか忘れていることがある

記憶には強さがあるのだろうか


数十年という限られた年月の間
どれだけの経験が忘れ去られたのか


形あるもの ないもの
ひとの命が絶えて残されるもの

消え去らないものには
生命の強さがあるのだろうか



足もとにある落ち葉の輝きは
生きる源を絶たれたのちも
最期の美しさを届けてくれている





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