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 【No.219】粋  2019/07/08 (Mon)
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昭和のはじめ
まだ「粋」という言葉が
ひと伝いに言われていたころ

粋を貫いたひとりの女性がいた

市丸・江戸小歌市丸

芸者から歌手として多くのひとに愛され
1997年 90歳でこの世を去るも
最期まで芸と共に生きた

花街で賑わった柳橋
その一角に建てられた静かな家が
彼女の終の住処だった

二階に上がるとそこからは
隅田川がよく見える

悲しみに暮れたとき
誰かが恋しいとき
彼女はここからじっと
川を見つめていたに違いない


「もうすぐしたら花火でも見にいらっしゃい」

眼を閉じると
市丸姐さんの声が聴こえる気がした


彼女の愛した家は
佇まいも粋だった




 【No.205】Together  2019/04/14 (Sun)
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いっしょに行こう
そう言われて
いっしょには行かなかった

あのとき手をつなぎ
いっしょに歩き始めていたら
いまとは違う自分がいた


旅にはいくつかの
分かれ道がある

振りかえらずに歩いた年月


ふと立ち止まると
あの頃見た風景が蘇る


海から吹く風が
今は恋しい





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駅から少し歩いた住宅街に
そのカフェはある


ガラスに囲まれた店内には
いつもレコードのBGMが流れ
カウンターには小さなガラスの器に
小花が飾られている

曲は女性店主の好みなのか
ユーミンや山下達郎が多い

静かな空間で珈琲も美味しい




あるとき店主にレコードについて
尋ねてみた

レコードを繰り返しかけるのって
大変ではないですか?

店主はさらりとスマートにこう応えた


レコードの音って疲れないんですよね


女性店主からは
無理をしない
何か自然体の美しさが感じられた


疲れない音
自分にはその意味が
少しわかるような気がした


道端でクローバーが
微笑むように揺れていた





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1月が過ぎていく
12分の1が心の中でカウントされる

これからどんな光景が待っているのか
未だ見ぬものとの出会いはあるだろうか


先日 SNSで紹介されていた動画で
木星の周りを回る衛星の名前を知った

IO(イオ)、EUROPA(エウロパ)、GANYMEDE(ガニメデ)
というギリシャ神話の登場人物から命名された3つの衛星だ
何とも素敵な名前である

衛星が発見された年をきいて驚いた
1610年1月
ガレリオ・ガリレイによって発見されている

日本では豊臣から徳川へと世が移ろうとしていた時代
中世のイタリアではガレリオが星と格闘していたのだ


400年以上前の同じ1月
果たしてガレリオには
どんな宇宙が見えていたのだろうか

木星の第1衛星 IOは
今日もゆっくりとその軌道を描いている





 【No.183】恋  2018/11/08 (Thu)
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あなたがいたら
もうなにもいらない
そんな恋が
誰でも一度はある

胸をしめつける想いは
やがて燃えつき消えていく

実る恋
実らなかった恋

新たな種子が落ちると
空はいつの日か
優しく雨で地面に合図する

いくつかの恋が
今日も何処かで芽生えている




 【No.175】TOOTH PASTE  2018/08/31 (Fri)
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いつの頃からだろうか
海外で地元のスーパーに売っている
「練り歯磨き」を土産に買うようになった

土産といっても自宅用としてだが
これが結構楽しめる
わずかな期間
旅の延長気分に浸れるからだ

中身はそれほど変わらないが
パッケージにそれぞれ個性があり
国柄や表現の違いが見てとれる


ちなみに写真はイタリア製の練り歯磨き
知人からもらったものだが
その美しい外装デザインは
化粧品のような輝きを放っている

まだ未使用だが
中身はどんなテイストなのか
少しばかり期待がふくらむ


残念なのは消耗品の運命として
この練り歯磨きもすぐに無くなってしまうことだ

やがて無くなるものが放つAURA



また新たな逸品を求めて 旅に出ようか





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雨がやんだ日
その手に一通の手紙を握りしめ
娘はサンダルで駆けていった

父はそんな娘の姿を
近くで見ているしか出来なかった



それは昭和という時代の出来事

どの家にもそれぞれが抱えた
ドラマがあった



続く平成という時代も
もうすぐ終わりを告げようとしている


電車で向かい側に座っている全てのひとが
携帯電話を手にして静かに座っている
新聞紙を畳んで読みふける会社員はいない


これは幼い自分たちが夢見た光景なのだろうか

手紙がメールとなり
筆跡のない画面を見つめながら
私たちは何処へ向かおうとしているのか


未来を生きる
きみのその手には






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夏という鞄から

乾いた地面に落ちた蝉


きのうまで鳴いていたのか

きょうも鳴くはずだったのか


誰にも気づかれず

天を仰ぐきみに

Lullaby





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いつの頃からだろうか
街のレストランやカフェで
オリーブをよく見かけるようになった

オリーブオイルが使われるイタリア料理店など
店先での雰囲気づくりに一役かっている



オリーブの写真は
そのまま撮ると葉の色が均一なため
どうしても画面が単調になる

白い背景に映し出される影は
淡いグレーが水面を描き出す


うつろな夏に
オリーブの影を追うひととき





 【No.139】akogare  2018/02/03 (Sat)
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欲しいものがあるとき。


何度も繰り返しその姿や形を見ては、
手に入れたときの情景を頭に浮かべる。

それは自分にとって本当に必要なものか。
明日も明後日も、一年後も必要なものか。
冷静に考える。

こうして悩んだり嘆息をもらすとき、
まだ先には希望がある。


そして恋愛にも似た
ひとときの憧れというその過程にこそ、
曖昧な幸せがある気がする。




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