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 【No.230】箱の虫  2019/10/06 (Sun)
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仕切られた小さな箱で

一夜を明かす人たちがいる


誰に迷惑をかけるでもなく

ひとりその日に終わりを告げる


雨は止んだだろうか

箱の中からはわからない


小さな虫が箱の中へ迷い込む

両手で静かに外へ逃がす



迷い込んだ虫のように

誰かが自分を外へ連れ出してくれないだろうか

そんな有り得ないことを思う


無音の箱の中で

時計の針だけが翌日になる

各駅停車で遠くへ旅をしている夢をみた



その日 雨は明け方まで降り続いた





 【No.228】落葉  2019/09/19 (Thu)
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遠くへ行ってみたいと誰かが言った

ほかの誰かが遠くは嫌だと言った

うつむきながら黙っているものもいた


ふいに強い風がふいて

皆んな方々へ飛ばされた


それぞれの願いは叶ったのか

誰も知るものはいない


思えばそれが秋の知らせだった





 【No.227】小径  2019/09/13 (Fri)
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あなたは忘れてしまったかも知れないけれど

まだそれぞれの生き方を探していた頃

この小径をふたりで歩いたことがありましたね


友人のお見舞いに行った帰り道

あなたは自分の将来について夢中で話していました

今にして思うとあの頃の自分はボンヤリしていて

あなたの話をうわの空で聞いていた気がします

それでも肩ごしに漂うあなたの甘い髪の香りは

ずっと忘れずにいました



時のうつろいと運命は気まぐれですね

数十年後の自分はそれなりに年をとり

あなたは逞しい母となりました



昔観た映画のように

もう一度あの頃のあなたに会いたい気がしました



もどれない夏がまたひとつ去っていきます





 【No.219】粋  2019/07/08 (Mon)
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昭和のはじめ
まだ「粋」という言葉が
ひと伝いに言われていたころ

粋を貫いたひとりの女性がいた

市丸・江戸小歌市丸

芸者から歌手として多くのひとに愛され
1997年 90歳でこの世を去るも
最期まで芸と共に生きた

花街で賑わった柳橋
その一角に建てられた静かな家が
彼女の終の住処だった

二階に上がるとそこからは
隅田川がよく見える

悲しみに暮れたとき
誰かが恋しいとき
彼女はここからじっと
川を見つめていたに違いない


「もうすぐしたら花火でも見にいらっしゃい」

眼を閉じると
市丸姐さんの声が聴こえる気がした


彼女の愛した家は
佇まいも粋だった




 【No.205】Together  2019/04/14 (Sun)
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いっしょに行こう
そう言われて
いっしょには行かなかった

あのとき手をつなぎ
いっしょに歩き始めていたら
いまとは違う自分がいた


旅にはいくつかの
分かれ道がある

振りかえらずに歩いた年月


ふと立ち止まると
あの頃見た風景が蘇る


海から吹く風が
今は恋しい





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駅から少し歩いた住宅街に
そのカフェはある


ガラスに囲まれた店内には
いつもレコードのBGMが流れ
カウンターには小さなガラスの器に
小花が飾られている

曲は女性店主の好みなのか
ユーミンや山下達郎が多い

静かな空間で珈琲も美味しい




あるとき店主にレコードについて
尋ねてみた

レコードを繰り返しかけるのって
大変ではないですか?

店主はさらりとスマートにこう応えた


レコードの音って疲れないんですよね


女性店主からは
無理をしない
何か自然体の美しさが感じられた


疲れない音
自分にはその意味が
少しわかるような気がした


道端でクローバーが
微笑むように揺れていた





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1月が過ぎていく
12分の1が心の中でカウントされる

これからどんな光景が待っているのか
未だ見ぬものとの出会いはあるだろうか


先日 SNSで紹介されていた動画で
木星の周りを回る衛星の名前を知った

IO(イオ)、EUROPA(エウロパ)、GANYMEDE(ガニメデ)
というギリシャ神話の登場人物から命名された3つの衛星だ
何とも素敵な名前である

衛星が発見された年をきいて驚いた
1610年1月
ガレリオ・ガリレイによって発見されている

日本では豊臣から徳川へと世が移ろうとしていた時代
中世のイタリアではガレリオが星と格闘していたのだ


400年以上前の同じ1月
果たしてガレリオには
どんな宇宙が見えていたのだろうか

木星の第1衛星 IOは
今日もゆっくりとその軌道を描いている





 【No.183】恋  2018/11/08 (Thu)
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あなたがいたら
もうなにもいらない
そんな恋が
誰でも一度はある

胸をしめつける想いは
やがて燃えつき消えていく

実る恋
実らなかった恋

新たな種子が落ちると
空はいつの日か
優しく雨で地面に合図する

いくつかの恋が
今日も何処かで芽生えている




 【No.175】TOOTH PASTE  2018/08/31 (Fri)
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いつの頃からだろうか
海外で地元のスーパーに売っている
「練り歯磨き」を土産に買うようになった

土産といっても自宅用としてだが
これが結構楽しめる
わずかな期間
旅の延長気分に浸れるからだ

中身はそれほど変わらないが
パッケージにそれぞれ個性があり
国柄や表現の違いが見てとれる


ちなみに写真はイタリア製の練り歯磨き
知人からもらったものだが
その美しい外装デザインは
化粧品のような輝きを放っている

まだ未使用だが
中身はどんなテイストなのか
少しばかり期待がふくらむ


残念なのは消耗品の運命として
この練り歯磨きもすぐに無くなってしまうことだ

やがて無くなるものが放つAURA



また新たな逸品を求めて 旅に出ようか





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雨がやんだ日
その手に一通の手紙を握りしめ
娘はサンダルで駆けていった

父はそんな娘の姿を
近くで見ているしか出来なかった



それは昭和という時代の出来事

どの家にもそれぞれが抱えた
ドラマがあった



続く平成という時代も
もうすぐ終わりを告げようとしている


電車で向かい側に座っている全てのひとが
携帯電話を手にして静かに座っている
新聞紙を畳んで読みふける会社員はいない


これは幼い自分たちが夢見た光景なのだろうか

手紙がメールとなり
筆跡のない画面を見つめながら
私たちは何処へ向かおうとしているのか


未来を生きる
きみのその手には






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