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誰にとっても過ぎ去った若き時代というのは、気恥ずかしさが
あるような気がする。
希望に満ちた10代、そして社会と関わりをもった20代。

自分にも弱さと葛藤のなか、時間だけが経過する年月があった。



社会人になって間もない頃、お世話になった写真機材を扱った店の店主から
小さな1枚のモノクロコピーをもらった。
店主は「これはきっと役に立つから」とだけ言い、差し出してくれた。

そこには写真と簡単な文章がそえられていた。

写真は映画監督の黒澤明氏だった。
そしてこう記してある。


  みんな、
  自分が本当に好きなものを
  見つけてください
  自分にとって本当に大切なものを
  見つけるといい
  見つかったら、その大切なもののために
  努力しなさい


そのときは、良いことを言うな、
というくらいにしか感じられなかったが、
店主の心遣いに深々と頭を下げてその場を立ち去った。



そしてそんなエピソードから数十年が経った。

もう店主はいないかも知れない。
あの時、店主がどうして自分にコピーをくれたのかは
今でもわからない。
ただ小さなモノクロコピーは今も手元に残っている。



時折そのコピーを読み返しては自問する。

自分にとって本当に大切なものは見つけられたのか。
そして大切なもののために努力してきただろうか。


答えは自分の中にある。





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好きなひとへの想いを手紙に書いたことはあるだろうか。

大正10年10月。
「白蓮事件」と世間を騒がせた柳原白蓮の逃走。

白蓮(燁子)から恋人・宮崎龍介へあてた手紙は実に700通におよぶという。

いまでは電子メールやSNSといった通信手段が手軽に使われる時代だが、
当時の郵便事情でのこの数には驚くほかない。



「好きな好きな手紙を下さい。
見度い見度い。わたしの人。
恋しうて 淋しうて なつかしうて 悲しうて 
どうしたらよいやら」


恋は盲目という言葉があるが、
一途な燁子の想いが突き刺さる文だ。


96年前の10月、「恋」という一文字を胸にしまい出奔した燁子。

時代の流れ、過去など顧みず、自分の信じる道を
駆けていったひとりの女性の生き様と凛々しさ。


その波乱に満ちた生き方が今もこころに響く。





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普段は食事についてこれといってこだわりはない。

嫌いな食材も特にない。
まあそれはそれで良いことだが
「何か食べたいものある?」と聞かれると、
「なんでもいいよ。」と相手に面白くない受け応えをしてしまう。
食事を楽しもうという時に、これはない。
いつも失言を繰り返してばかりいる。


ひとりの時間。
朝食をとった後しばらく何も口にせず夕刻をむかえる。
風の心地よい季節、シャツ一枚で身軽に外出する。

こんな時には食べたいものがひとつだけ浮かぶ。
ステーキだ。香ばしく焼けたミディアムレアのステーキだ。

まずはグラスワインで口を軽く潤し、よく切れるナイフで肉を少し大きめにカットする。
切り口はブラウンからワインレッド、そしてコーラルピンクへと変化している。
フォークに肉の重みを感じながら、ゆっくりと口に運ぶ。

その瞬間は何の言葉を発するでもなく、じんわりとただ時間をおくる。
本当に美味しいものに出会ったときは、言葉などいらない。
ただ噛みしめるだけだ・・・。

200gの食材が運ぶ幸せ行きのチケット。



休日の夕暮れ。
そんなことを考えながら、ふと財布を見直す。
カレーうどんでも十分幸せになれそうだ。





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2月。擂り鉢状の京の街並に四方の山から冷たい空気が滑り込んでくる。

この時分の京都へは何度か来ているが、今年の京都はとりわけ寒さを感じた。
神社や寺の多い山あいでは一段と冷気が感じられる。


南禅寺へ来たのは随分と久しぶりだった。
威風堂々とした門構えに、はじめて見たときの驚きが甦る。
敷地内へ入り水路閣を目にした時だった。
何かが違って感じられた。
この煉瓦造りの構築物はもっと大きなものではなかったのか。
どうしてそんな風に感じられたのかはわからないが、前に見た時から数十年が経ち、長い時間の中で自分の中に固定されたイメージがテレビや本の知識を吸収することでスケール感に誤差が生じてしまったのかも知れない。

京都には訪れる度に違った感触が湧きあがる不思議さがある。


しばらくして街中へもどると、いつしか冷たい風が細雪に変わり舞いだした。
それはまるで宙を舞う白い虫のようで、京都らしい粋な一幕を観た気がした。




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京都、イノダコーヒー。定番といわれる店には、それなりに落ち着ける理由がある。

石積みの外壁に奥まった庭のテーブル席。
清潔感のある赤いチェックのクロスが、優しく時間を包み込む。
白地のカップに描かれたロゴからは親しみとセンスの良さを感じる。

そしてそこにはパソコンや携帯電話のない、在りし日のコーヒー店の姿が残されている。



 【No.10】龍安寺  2014/02/11 (Tue)
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冬の京都は幾分観光客も少ないようだが、それでもいくつかの寺や神社には多くの人達が足を運んでいる。

禅寺の龍安寺もそのひとつだ。まわりの庭から隔絶された石庭。冬は背景の無彩色な空と土塀の複雑に変化した自然色、白砂が美しいコントラストを映し出す。

幅22m、奥行10mの庭に15個の石が配置された枯山水。
室町時代の作庭は作者不明だが、それがまたこの庭の全貌を見せない魅力となっている。



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