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いまから100年前
それはさほど遠い日の話ではない

私たちの祖父母が生きて活躍していた頃

モンパルナスに続くこの道を
芸術に明日の希望を夢見た画家、彫刻家、小説家、詩人、作曲家など
数多くの人びとが往来していた
まさに芸術の太陽がパリだけを照らしていた頃である


しかし時代は残酷にも
戦争という大きな流れにのみこまれ
多くの芸術家がこの場所を去っていった

在りし日の面影だけを残して
時は流れ街も移り変わる
よき時代にこの地で生まれた多くの作品だけが
今も私たちに語りかけてくれる

モンパルナスで生きたひとりの画家が
こんな言葉を残している
「必ず絵には永久に生きてる魂があると思います」
-レオナール・フジタ-


2020年
戦争とは別の戦いで多くの隣人を失っている私たち
「アーティストは(社会にとって)不可欠であるだけでなく、
とりわけ今は、生きるために欠かせない存在だ」
ドイツ・グリュッタース大臣のメッセージが心に響く

「生き続けること」を考えさせられる日々が続いている




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街から人びとが消え
静寂に包まれるとき

君は悲しんでいるか
昨日を顧みているか
明日を夢見ているか
心の声が木霊する

人は愚かな一面もあるが
支えあう強い一面もある

いま一度現実と向き合うこと
何かを変えていくことが
求められている


そして希望はある


-すべての人には、幸せに生きる、使命があります。だから、すべての人を幸せにする、義務があります。-
Maria Skłodowska-Curie





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あなたにとって至福とはどんなときだろう

仕事を終えたあとの一杯
目標にしていた距離を完走できたとき
欲しかったものが手に入り包みを開けるとき
休日の何もしないひととき

それぞれの想いが至福にいたる過程
ひとによって違いもあるだろうが
それは困難なほど得られるものも大きい



いま世界が抱える大きな病いが
終息をむかえる頃

普通の生活が至福に思えるときが
一日も早く来ることを祈る





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自分の過去を振り返るとき
どれほどの時間を思い出せるだろうか

幼かった頃の通学路で見た夕刻
友人たちと過ごした青い時間
海外の知らない場所をひとり彷徨ったとき
母親が亡くなったと聞いたとき

瞼を閉じれば
一握りの邂逅が頭をよぎる

そしてその水面の下には
忘れ去った途方もない時間がある


消えた時間とこれからの時間
時計は行き来を繰り返す自分に
何かを語りかける





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私たちが生きている間は 
体重という重さを意識して
毎日をおくっている

太ったり痩せたり
自分の重さに一喜一憂しては
健康でいることを祈っている

昨年のことだった
親族の火葬に立ち会った際
人は灰になることで
重さを失うということを
改めて考えさせられた


いつの日か
自身が重さを失うその日まで
わずかでも記憶に残る
重みのある作品を残せたらと思う





 【No.241】朝陽  2020/02/10 (Mon)
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朝陽が音もなく

生きとし生けるものへ

安らかな温もりを届ける


それは今生まれたものや

年老いて風化するもの

全てに優しく降りそそぐ


俯いていた足元のクローバーが

陽に向かって微笑みはじめる






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Bonjour Monsieur


あなたがいた頃のパリとは
随分と街も変わりました。
たぶん今のパリを見たら、
そのきれいに様変わりした風景に
驚かれると思います。


あなたが作品に描かれた広告ポスターが集まった壁面も、
今では殆どその姿を見なくなりました。
パリらしさが少なくなるというのはとても残念です。


先日、小雨のマレ地区を歩いていた際に
懐かしいポスターの壁面を見つけました。

ふとあなたのことが思い浮かび、
写真を撮りました。

ポスターもあなたが描いた頃とは変わっていることでしょう。
ただどんな時代であっても広告は時代の鏡のような、
そんな気がします。

あなたの描いた広告の文字が、絵柄が、見て描いた時代の温度が
絵を通して今も語りかけてくれます。
移り変わるもの、消え去るもの、それら全ては
ひとの姿やこころと同じなのだということかもしれません。


作家人生の大半をパリで過ごしたあなたが、
たとえ短くともその燃える魂をパリに捧げたことを、
100年後に生きている私は誇らしく想っています。




※ 佐伯祐三、画家。
1928年、30歳にしてパリでこの世を去る。





 【No.239】Smile  2020/01/14 (Tue)
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毛糸で編んだマフラーを首に巻き
普段は見ない本屋のコーナーで時間をつぶす

新しい年の休日は
習慣にも僅かな変化をもたらしてくれる


午後3時 花屋前での待ち合わせ

イヤホンからナット・キング・コールの
「Smile」が流れる

今の自分は疲れた顔をしていないだろうか
花に向かって微笑んでみた





 【No.238】冬の華  2020/01/05 (Sun)
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年の若かった頃は
「花の写真」というものに抵抗があった。
大御所と呼ばれる写真家がクローズアップの
花の写真を発表するのを見る度に、
またかと思っていた。

自分が若いとは言えない年代になると
その理由がわかる気もしてきた。

花には刺激がない。
若い頃は花よりもっと刺激的なものに
目が行くのは当然のことだろう。
じっと花を凝視することなど
その頃には考えも及ばなかった。


花の写真で一番印象に残っているのは
R・メープルソープの作品だろうか。
花と光を描いた官能的ともいえる彼の作品は
長い時間、残像が頭から離れなかった。


冬のパリで出会ったシクラメン。

冬ならではの
そこに静かな「華」を感じた。




 【No.237】sign  2019/12/17 (Tue)
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兆候というサインに

自然の変異を感じとる動物たち

そこには私たちが失った

本能的な能力がある



セーヌに揺れる光

それは環境のバランスを見失うものたちへ

静かに告げられた

何者かのサインのようにも見える





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冬の空を見上げると

そこには裸になった木々たち


太陽に向かい葉を開き

育んだ様子が枝から伺える


ふと自分を振りかえると

自分にも生きた痕跡があるだろうか

長く生きた痕跡 何かを成し遂げた痕跡

答えは見つからない


時が経てばここへも春がくる

旅することができない木々たちには

新緑という愛が待っている




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街がひととき静けさにつつまれ

空の明るさに翳りが訪れるころ

その音色は何処からともなく響きわたる


アパルトマンの部屋からか

それとも近くの公園からだろうか

トランペットの音色が

旅人たちの今日に別れを告げる





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遠い国から来たきみに

何を伝えてあげれただろうか

過ぎゆくきみに風が寄り添う


ふたたび会える日はくるだろうか

遥か空の向うから

ポンヌフに新たな風が舞い降りる






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きみには見えるだろうか
ボーヴォワールの面影が

きみには聴こえるだろうか
左岸を彷徨う異邦人の唄が

きみには届くだろうか
熱いショコラショーの香りが


この場所を目指し

この場所へ還る


サンジェルマン・デ・プレ

悠久の時と夢の狭間で





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写真のような絵画

絵画のような写真

これまでの歴史を振り返ると

写真でしか表せないもの

絵画でしか描けないものが好まれてきた


どちらかに近づきすぎると

近づいている核心に取り込まれてしまうからか


目に映ったもの 頭に浮かんだものを留めておきたい

絵画も写真も同じような目的から始まった


それが時代を経てジャンルが確立すると

絵画とは 写真とはという境界を守るひとが現れる

番人たちはこうあるべきという作例を得意に見せつけた


大きな変遷のない絵画の技術に対して

今の写真を支える技術は著しく変化を続けている


デジタル加工された写真は限りなく絵画に近づき

見ただけでは判別できない作品で溢れている


写真と絵画

メッセージはどんな表現であろうと存在している

どちら側に立とうと

こころを動かす作品を大切にしたい




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あなたの声が聴きたくて

とぎれとぎれに雑音の中

ダイヤルに神経をこめた

遠くて淡い記憶のカケラ






 【No.230】箱の虫  2019/10/06 (Sun)
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仕切られた小さな箱で

一夜を明かす人たちがいる


誰に迷惑をかけるでもなく

ひとりその日に終わりを告げる


雨は止んだだろうか

箱の中からはわからない


小さな虫が箱の中へ迷い込む

両手で静かに外へ逃がす



迷い込んだ虫のように

誰かが自分を外へ連れ出してくれないだろうか

そんな有り得ないことを思う


無音の箱の中で

時計の針だけが翌日になる

各駅停車で遠くへ旅をしている夢をみた



その日 雨は明け方まで降り続いた





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いつか翼が折れたら

草むらで蘇る夢をみよう


誰も助けてはくれない

空にも 陸にも

味方などいないから


それでも風を受けながら

今日も飛び続ける


それが自分だから

それが生きることだから




 【No.228】落葉  2019/09/19 (Thu)
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遠くへ行ってみたいと誰かが言った

ほかの誰かが遠くは嫌だと言った

うつむきながら黙っているものもいた


ふいに強い風がふいて

皆んな方々へ飛ばされた


それぞれの願いは叶ったのか

誰も知るものはいない


思えばそれが秋の知らせだった





 【No.227】小径  2019/09/13 (Fri)
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あなたは忘れてしまったかも知れないけれど

まだそれぞれの生き方を探していた頃

この小径をふたりで歩いたことがありましたね


友人のお見舞いに行った帰り道

あなたは自分の将来について夢中で話していました

今にして思うとあの頃の自分はボンヤリしていて

あなたの話をうわの空で聞いていた気がします

それでも肩ごしに漂うあなたの甘い髪の香りは

ずっと忘れずにいました



時のうつろいと運命は気まぐれですね

数十年後の自分はそれなりに年をとり

あなたは逞しい母となりました



昔観た映画のように

もう一度あの頃のあなたに会いたい気がしました



もどれない夏がまたひとつ去っていきます





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